2011年に出版された本書、干支が一回りするまで出会えなかったことが悔やまれる。
それほどの感動がありました。
先日、定期通院の診察待ち時間なども含め、幸運にも日中(約半日)読書できる時間があり、
1冊一気に読みきってしまいました。
NHKでドラマ化されることを知り原作小説に興味を持っていたところ、Amazon kindleunlimitedのラインナップの中に偶然見つけ、早速書棚に入れ、まさに一気でした。
副題から、法廷を舞台にした「障害者の人権を適切に守ろう」「障害者も一人の人間として尊重されるべき」的な、ありがちなストーリーを想像していたが、見事に裏切られました。最終盤は、柄にもなく涙しながら読んでいました。(一人の空間で本書と向き合えてよかった。奥方様が一緒だったと思うと…)
ミステリー小説の特性上、当たり前ですが、ある事件を中心にストーリーが進んでいくため、複雑な印象はもちろん持ちながらも、非常にすっきりとした読後感を得ることが出来ました。満足度は随一!
(個人の感想です。)
特筆すべきは、ろう者や手話について、非常に勉強になる点です。いかにこれまで自分が表面的な部分しか知らなかったか。またそれだけの知識で知った気になっていたかを思い知らされ、頭をガツンと一喝されたような衝撃がありました。
「ろう者の方が不自由な思いをしている」「社会とのつながりにおいてこんな苦労がある」「大変な思いをしている当事者は社会的に福祉で守られ、尊重されるべきである」等という、よく耳にする、耳障りのよいトーンで語られることは無く、ろう者の方々が、手話を言語として、また、自分たちの社会的地位の確立・向上を目指して団結して闘ってきた過去などを文化として大事にしているというかなり踏み込んだ視点を登場人物に語らせながら、一般的には「耳が聞こえない人たちのコミュニケーション手段」で片付けられてしまいがちな「手話」の再定義を見事に表現し、読者にとても奥の深い、多面的なモノであることを理解させることに成功した内容になっているところに度肝抜かれ、小説を読んでいながら、ろう者・手話のこれまでの解説書(大学の障害者福祉学なんかで取り扱う教科書/解説書)を読んでいるかのような、実のある充実した内容でした。思いがけず、非常に勉強になりました。
文中、手話表現を手や身体、表情の動きを文章で表現していたり、手話の意味するところをカッコをうまく活用して表現する等読みやすさ・わかりやすさに非常に配慮された構成になっている点も気持ちよく読み進めることが出来る大きな要因だと感じました。これらの表現から、「手話」は文法的に英語に非常に近い等の気づきも得ることが出来ました。
語られていることが、必ずしも、ろう者全体に当てはまるものではないとの意識は重要との前提ではありますが、「ろう者」の方の理解のために専門書では無く、小説の体裁をとりながらこれほどの学びを得ることが出来たことに衝撃を受けたと同時に、感謝の念を持ちました。
年の瀬迫る、師走のある1日に、今年イチの超優良書籍と出会えたことに感謝。
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